介護福祉士等は「福祉用具専門相談員」と名乗れない?【厚生労働省に直接聞いてみた】

結論

結論から言うと、介護保険法施行令第4条第1項に定められている資格保有者は、福祉用具専門相談員指定講習を修了していなくても、法令上の「福祉用具専門相談員」に該当します。

対象となるのは、次の資格保有者です。

  • 保健師
  • 看護師
  • 准看護師
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 社会福祉士
  • 介護福祉士
  • 義肢装具士

これらの資格保有者に加えて、福祉用具専門相談員指定講習を修了した者も、福祉用具専門相談員に該当します。

 

つまり、「指定講習を修了した人だけが福祉用具専門相談員である」という理解ではありません。

この点について、私は厚生労働省老健局高齢者支援課へ直接問い合わせました。

その回答は、次のとおりでした。

見解のとおり、介護保険法施行令第4条第1項より、指定講習修了者のみを福祉用具専門相談員とするものではないです。

かなり短い回答でしたが、内容は明確です。

では、なぜわざわざ厚生労働省にまで確認したのか。

きっかけは、Yahoo!知恵袋で見かけたある回答でした。

きっかけはYahoo!知恵袋

Yahoo!知恵袋を見ていると、

「理学療法士は福祉用具専門相談員になれないのか?」(気になる方は、リンクをご確認下さい。)

という趣旨の質問を見かけました。

 

理学療法士の資格を持っている人が、福祉用具専門相談員として働けるのかを尋ねる内容です。

その回答の中に、

「理学療法士は福祉用具専門相談員として業務を行うことはできるが、指定講習を修了していないため『福祉用具専門相談員』とは名乗れない」

という趣旨の説明がありました。

 

私は現在、福祉用具専門相談員として仕事をしています。

そのため、この回答を読んだときに少し違和感がありました。

本当に、「業務はできるけれど、福祉用具専門相談員とは名乗れない」という制度になっているのだろうか。

そう思って、法令を確認してみることにしました。

介護保険法施行令第4条を確認してみる

福祉用具専門相談員については、介護保険法施行令第4条第1項に規定があります。

そこでは、一定の資格を持つ者や指定講習を修了した者について、「福祉用具専門相談員」としています。

対象となるのは、保健師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、義肢装具士、そして指定講習修了者です。

 

この条文を読む限り、私には、

「指定講習修了者だけが福祉用具専門相談員なのではない」と読めました。

 

むしろ、

介護福祉士であれば介護福祉士の資格によって、
理学療法士であれば理学療法士の資格によって、
指定講習修了者であれば指定講習の修了によって、

それぞれ福祉用具専門相談員に該当する。

そのような構造に見えます。

それでも「名乗れるのか」が気になった

ただ、ここで一つ疑問が残りました。

福祉用具専門相談員として配置できることと、

「福祉用具専門相談員」と名乗ることは、本当に同じ扱いなのか。

 

ネット上では、「配置基準上は福祉用具専門相談員として扱われるが、指定講習を受けていない人は名称を使えない」という解釈も見かけます。

法令を読む限り、その説明にはどうも引っかかる。

そこで、自分でもYahoo!知恵袋に質問を投稿してみました。

自分でも質問してみた

私が確認したかったのは、単純です。

指定講習を修了していない介護福祉士や理学療法士などの資格保有者は、「福祉用具専門相談員として働けるだけなのか」

それとも、法令上その人自身が「福祉用具専門相談員」に該当するのか。

ここをはっきりさせたかったのです。

 

ただ、Yahoo!知恵袋で意見を聞いても、最終的には個人同士の解釈です。

※気になる方は「https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13331282953」を見てください。

 

ならば、所管しているところに確認した方が早い。

そう考えて、厚生労働省へ問い合わせることにしました。

厚生労働省へ直接問い合わせた

厚生労働省老健局高齢者支援課に、次の点を確認しました。

1つ目は、

介護福祉士等の資格を持つ者は、福祉用具専門相談員指定講習を修了していなくても、介護保険法令上の福祉用具専門相談員に該当するのか。

2つ目は、

その資格保有者が、指定福祉用具貸与事業所や指定特定福祉用具販売事業所で福祉用具専門相談員として配置・従事する場合、

「福祉用具専門相談員」と名乗ることや、名刺・職員紹介などに記載することに問題があるのか。

 

特に、

「介護福祉士は福祉用具専門相談員として業務はできるが、指定講習修了者ではないため、福祉用具専門相談員とは名乗れない」

という解釈について、厚生労働省としてどのように考えるのかを尋ねました。

以下、メール送信文です。

厚生労働省
老健局 高齢者支援課
福祉用具・住宅改修係 御中

お世話になります。

介護保険法施行令第4条第1項に規定される「福祉用具専門相談員」について、資格要件及び名称の使用について確認したく、ご照会いたします。

同項では、保健師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、義肢装具士及び指定講習を修了した者が列挙され、これらの者について「福祉用具専門相談員」と規定されているものと理解しております。

そこで、以下の2点についてご教示いただけますでしょうか。

1.介護福祉士の資格を有する者は、福祉用具専門相談員指定講習を修了していなくても、介護保険法令上の「福祉用具専門相談員」に該当するとの理解でよろしいでしょうか。

2.上記に該当する者が、指定福祉用具貸与事業所・指定特定福祉用具販売事業所において福祉用具専門相談員として配置・従事する場合、「福祉用具専門相談員」と名乗ること、また名刺・職員紹介等に「福祉用具専門相談員」と記載することについて、法令上問題はありますでしょうか。

特に2点目について、

「介護福祉士は福祉用具専門相談員として業務を行うことはできるが、指定講習修了者ではないため『福祉用具専門相談員』とは名乗れない」

との解釈を目にすることがありました。

しかし、介護保険法施行令第4条第1項の規定を見る限り、指定講習修了者のみを「福祉用具専門相談員」とするのではなく、同項各号に掲げる資格保有者等を含めて「福祉用具専門相談員」と定義しているように読めます。

この理解について、厚生労働省としての解釈をご教示いただけますと幸いです。

可能でしたら、根拠となる法令、通知、Q&A等についても併せてご教示いただけますと幸甚です。

何卒よろしくお願いいたします。

厚生労働省からの回答

返ってきた回答は、次のとおりです。

お世話になっております。

厚生労働省老健局高齢者支援課です。

お問い合わせいただきました件につきまして回答させていただきます。

見解のとおり、介護保険法施行令第4条第1項より、

指定講習修了者のみを福祉用具専門相談員とするものではないです。

よろしくお願いいたします。

非常に簡潔です。

ただし、重要なのは、

「指定講習修了者のみを福祉用具専門相談員とするものではない」とはっきり回答されている点です。

つまり、「指定講習を受けていないから福祉用具専門相談員ではない」という事ではありません。

資格と指定講習の関係を整理すると

制度をかなり単純化すると、次のようになります。

介護福祉士の場合

介護福祉士資格を持っていれば、指定講習を修了していなくても福祉用具専門相談員に該当します。

理学療法士の場合

理学療法士資格を持っていれば、同じく指定講習を修了していなくても福祉用具専門相談員に該当します。

対象資格を持っていない場合

対象資格がない場合でも、福祉用具専門相談員指定講習を修了することで、福祉用具専門相談員として従事できます。

つまり、「福祉用具専門相談員になる方法が指定講習しかない」わけではありません。

ここを混同すると、「指定講習を受けていないなら福祉用具専門相談員ではない」という誤解につながりやすいのだと思います。

名称使用については少し慎重に考えたい

今回の問い合わせでは、

「福祉用具専門相談員と名乗ること」と「名刺や職員紹介に福祉用具専門相談員と記載すること」についても質問しています。

 

厚生労働省からは、「見解のとおり」との回答をいただきました。

一方で、返信文の中に、「名刺への記載は問題ありません」といった個別具体的な表現まではありません。

そのため、本記事では少なくとも、「指定講習修了者のみが法令上の福祉用具専門相談員なのではない」という点については、厚生労働省から確認できた内容として整理します。

 

制度について書く以上、都合よく一文を広げて解釈するより、確認できた範囲をそのまま書く方が安全です。

なぜこのような誤解が生まれるのか

今回調べていて感じたのは、「福祉用具専門相談員=指定講習を受けて取得する資格」というイメージが強いのではないか、ということです。

たしかに、一般的に福祉用具専門相談員になる方法としては、指定講習がよく知られています。

 

そのため、「指定講習を受けていない」=「福祉用具専門相談員ではない」と考えてしまうのかもしれません。

しかし、介護保険法施行令を見ると、一定の国家資格保有者と指定講習修了者は、同じ条文の中で福祉用具専門相談員として規定されています。

ここは、資格制度の説明だけを見ていると分かりにくい部分だと思います。

今回の件で感じたこと

今回の話は、Yahoo!知恵袋の回答が正しいか間違っているか、それだけの話ではありません。

介護制度では、「よくそう言われていること」と「法令上そう書かれていること」

が、必ずしも一致しないことがあります。

特に、

資格要件、
人員基準、
指定基準、
加算要件、

こうした話は、ネット上の説明だけを見ていると、いつの間にか解釈が一人歩きしていることがあります。

分からなければ、まず法令を見る。

通知やQ&Aを見る。

それでも分からなければ、所管行政に確認する。

結局これが一番確実です。

 

今回はYahoo!知恵袋で感じた小さな違和感がきっかけでした。

ただ、その違和感を放置せず調べたことで、私自身も福祉用具専門相談員の法令上の位置づけを改めて理解することができました。

 

同じように、

「理学療法士は福祉用具専門相談員になれるのか」

「介護福祉士は指定講習を受けないと福祉用具専門相談員と名乗れないのか」

と疑問に思った方の参考になればと思います。